※注釈※
この記事は、クトゥルフ神話の世界観に基づいた完全な創作フィクションです。
現実の出来事や人物とは一切関係ありません。
ビール工場、見学ツアーリニューアルと「黒き泡」事件
ビール北海道工場は2222日、見学施設をリニューアルし、新たに「ビール☆ツアー」を開始した。新ツアーでは、醸造の歴史やこだわりを学びながら、試飲スペースで限定のビールが提供される。しかし、ツアー開始直後から奇妙な噂が広がり始めた。
「ビールの泡が、黒い影のように動くんだ」
「飲むと頭の中に、海の底みたいな低い響きが聞こえる」
一部の来場者が体調不良を訴え、彼らの共通点は「限定試飲ビール」を口にしたことだった。分析の結果、ビールの成分に異常は見つからなかったが、工場内のタンクを調べた職員が謎の低いうなり声を聞いたと報告した。
さらに、工場内の古い地下貯蔵庫から、20世紀初頭に封印されたとされる「サッポロ禁忌醸造記録」が発見された。そこにはこう記されていた。
「地下の水源より異形の泡立ちあり。醗酵槽の奥より異音。黒き泡、語らずとも我を知る。」
この報告を最後に、記録の筆者は行方不明となっている。
赤れんが庁舎前のスケートリンク、氷の下から這い出るもの
2月22日から28日まで開催された「スマイルリンクさっぽろ」。歴史ある赤れんが庁舎の前で冬のひとときを楽しめるとあって、多くの観光客が訪れた。しかし、夜になると奇妙な現象が報告されるようになった。
「氷の下に、何かがいる。」
リンクの中央でスケートをしていた親子が、氷の奥からのぞく「無数の目」に気づき悲鳴を上げた。最初は冗談かと思われたが、夜間の監視カメラには、スケートリンクの氷がわずかに波打ち、何かが動いているような映像が残されていた。
調査のため、リンクを削ってみたところ、氷の下から古い石板が発見された。それは、アイヌの伝承に伝わる「カムイの門」と酷似した模様が刻まれていた。専門家は「氷が張ったことで、長らく封じられていたものが目覚めた可能性がある」と慎重に言葉を選んだが、石板の紋様は日に日に変化し続け、まるで「なにか」が内部から刻み直しているようだった。
リンクの氷は、ある晩を境に突如として崩壊した。
翌朝、リンクの中央に直径3メートルの黒い穴が出現し、その底はどれだけ覗き込んでも見えなかった。調査隊が投入したカメラは全て不明のノイズを記録し、30メートル降下した時点で通信が途絶えた。現在、穴の周囲は封鎖されている。
札幌駅南口再開発計画の延期と異界の碑文
JR北海道は札幌駅南口の再開発計画について、当初予定していた2028年度の開業を最長で2年延期すると発表した。しかし、工事現場の労働者たちは別の理由を口にする。
「掘り返すたびに、同じ石碑が出てくるんだ」
札幌駅の地下を掘り進める度、不可解な石碑が現れたという。それらは異なる場所から発掘されるのに、なぜか同じ形状、同じ文様を持ち、翻訳不能の古代文字が刻まれていた。
「夜中になると、工事現場の底から声がする。」
現場の監視カメラには、作業員が突然立ち尽くし、耳を塞ぎながら崩れ落ちる様子が記録されていた。彼らは一様に「地の底から何かが呼んでいる」と呟き、正気を失っていった。
調査の結果、札幌駅南口一帯の地質が通常の地層と大きく異なり、地下30メートル付近に何らかの巨大な構造物が埋もれている可能性が浮上した。これは、1923年の「札幌大異変」の際に封じられたものであるという説もあるが、詳細は不明だ。
札幌市内の冬イベント、異様な変調
札幌市内で開催された各種冬イベントが、今年は異様な様相を見せた。
・「雪まつりの雪像が、一晩で変形した」
・「氷像が解けていくと、中から知らない顔が浮かび上がる」
・「雪の中から、奇妙な声が聞こえる」
特に、雪像の一つは本来制作される予定のなかった「巨大な触手の像」へと変貌を遂げ、関係者は困惑したという。映像を確認すると、明らかに誰も手を加えていないにも関わらず、雪が勝手に積み上がるようにして像が形成されていた。
また、ある日突然、雪の積もった広場に「直径5メートルの円陣」が出現した。誰も足跡をつけていないにも関わらず、完全な幾何学模様が描かれていたという。
札幌市、雪害対策と“封じの儀式”
札幌市は、例年以上の大雪対策を進めていたが、ある晩、除雪車の一台が行方不明となる事件が発生した。GPSの記録では、車両は「ありえない角度で沈んでいった」とされ、現場には巨大な「手形」に見える雪のくぼみが残されていた。
この事件を受け、札幌市の一部関係者は、古くから伝わる「封じの儀式」を極秘裏に執り行った。アイヌの伝承に基づくこの儀式は、かつて札幌の地下に眠る“名状しがたき存在”を鎮めるためのものとされる。
しかし、式の最中、儀式に参加した一人の男がこう呟いたという。
「……もう、手遅れかもしれない。」
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