札幌異聞 二〇二五年二月九日【異変の兆し:凍てつく闇の囁き】

札幌

※注釈※
この記事は、クトゥルフ神話の世界観に基づいた完全な創作フィクションです。
現実の出来事や人物とは一切関係ありません。

2月8日、札幌は例年にも増して冷え込み、薄暗い雲が街を覆い尽くしていた。日本海側に発生した低気圧の影響で、断続的に降る雪が視界を遮る中、市民たちは奇妙な現象に直面していた。「空から降る雪が、まるで生きているようだ」と語る者もいれば、「深夜の街角で、異形の影を見た」という声もあった。

異変の兆し:凍てつく闇の囁き

午前7時、札幌市内の防災センターには数件の不審な通報が寄せられた。通行人が「雪の結晶が奇怪な模様を成している」と訴え、さらには「粉雪の中から小さな目がこちらを覗いている」と証言する者も現れた。専門家の調査によると、通常の結晶構造とは異なる形状が観測され、何らかの未知の要因による影響が示唆されている。

一方で、これに関連するかのように、大通公園で開催中の「さっぽろ雪まつり」の会場では、雪像の一部が原因不明の溶解を起こしていた。特に大通2丁目会場に展示されていた「とある未来の雪のまち」のモニュメントが、奇妙な歪みを伴いながら崩れ落ちたことが報告されている。目撃者によると、雪像の内部から黒い粘液状の物質が滴り落ち、「聞き取れない囁き声」が周囲に響いたという。


つどーむ会場に現れた「這い寄るもの」

「つどーむ会場」では、家族連れが雪のアトラクションを楽しむ光景が広がっていた。しかし、午後3時頃、会場にいた数名の子どもたちが突如として「地面の下から何かが蠢いている」と訴え始めた。ほどなくして、雪を踏みしめるたびに低いうなり声のような音が響くことに気付いた人々は、次第にその場を後にしていった。

夜になり、つどーむの雪壁に刻まれた不可解な模様が発見された。まるで未知の言語を描いたようなそれは、古代文献に詳しい専門家によれば「ルルイエ文字」と類似している可能性があるという。この模様の発見を境に、会場周辺では「空気が異様に重く感じる」「時折、低いうめき声が聞こえる」といった報告が相次いだ。


列車が見た悪夢:特急『冬のラベンダー号』の異変

札幌と富良野を結ぶ臨時特急「冬のラベンダー号」は、この日も定刻通りに運行していた。しかし、札幌を出発して間もなく、一部の乗客が奇妙な違和感を覚えたという。彼らの証言によれば、「窓の外に、奇妙なものが這いずっていた」とのことだ。乗務員が確認した際には異常は見られなかったものの、車内のモニターには一瞬だけ「巨大な触手の影」が映り込んでいたことが判明している。

その後、列車は滝川付近で突如として停車。車両全体が10分ほど動かなくなったが、その間に乗客の一人が「見知らぬ古びた街が広がる幻覚を見た」と語った。その街には巨大な石像がそびえ立ち、彼の意識の中で「イア!イア!クトゥルフ・フタグン!」という声が響いたという。


医療機関での不可解な出来事:囁きの記録

2月19日から本格運用が予定されている救急医療情報の「見える化」システムを試験導入していた札幌市内の病院では、この日、未確認の音声データが記録されるという事象が発生した。ある救急搬送患者のデータを確認していたところ、突如としてシステム内に「未知の言語を発する囁き声」が記録され、それが医療従事者の端末から再生されるというものであった。

音声解析の専門家によれば、それは「人間の声ではなく、何か別の存在のもの」に酷似しているとのことだ。データはすぐに削除されたが、システムを管理する技術者たちは「これは単なるバグではない」と語り、再発の危険性を指摘している。


札幌を覆う影:旧支配者の目覚めか?

これら一連の不可解な現象について、オカルト研究家や神話学者の間では「旧支配者の影響が北海道に及び始めているのではないか」との見解が浮上している。かつて北方には未知なるものを封じる儀式が存在していたとも言われ、雪と氷の都市・札幌は、彼らの目覚めを阻む最後の要塞だったのかもしれない。

夜が更けるにつれ、市内各地では不可解な異音の報告が相次ぎ、月のない暗闇の中で、ふとした瞬間に「何か」が動いているような気配を感じる者もいた。果たして、これはただの偶然なのか、それとも、クトゥルフ神話の恐怖が現実に忍び寄っているのか——。

市民たちは知らず知らずのうちに、深淵の存在へと一歩ずつ近づいているのかもしれない。

イア!イア!クトゥルフ・フタグン!

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