福岡異刊 2025/03/08【バスの減便と異形の乗客】

福岡

※注釈※
この記事は、クトゥルフ神話の世界観に基づいた完全な創作フィクションです。
現実の出来事や人物とは一切関係ありません。

バスの減便と異形の乗客

福岡の夜は、いつもと違う不気味な静寂に包まれていた。博多の繁華街では、明かりがまばらに灯るのみで、多くの市民が「何かがおかしい」と口々に囁き合っていた。

西日本鉄道は、バスの運行を大幅に減便すると発表したが、その理由は単なる運転手不足ではないという噂が広がっている。運転手たちは、深夜の路線で奇妙な現象に遭遇していたのだ。

「終電近くの便に乗ると、異様な乗客がいることがあるんです」
そう語るのは、20年の経験を持つベテラン運転手の田村浩司氏(56)。
「人間とは思えない、背丈の合わないコートを着た連中が、無言で座っているんですよ。目が合うと、奇妙な音が耳元で響く。言葉じゃなく、脳に直接何かを流し込まれるような感覚なんです」

また、バスの運行記録には不可解なものが増えていた。本来走るはずのないルートを示すGPS記録、行き先を伝えずともバス停に現れ、運賃を払わない乗客。そして何より、降車記録のないのに消えている乗客が存在していた。


運転手の失踪と古き禁忌

西鉄バスの運転手数名が失踪した。彼らの最後の目撃情報は、中央区天神のバスターミナルだった。しかし、防犯カメラの映像を確認すると、彼らはまるで霧に飲まれるように、視界から消えていた。

「バスの減便は、ただの労働問題ではないのでは?」
都市伝説を研究する作家・I氏(43)は語る。
「福岡の地下には、古代より”深淵の道”が存在すると言われています。かつての博多の商人たちは、それを『奈落』と呼び、決して近づいてはならないとされていました。昨今の開発により、その禁忌が破られた可能性があります」

彼の調査によれば、西鉄バスの減便エリアは、かつての古地図に記された「呪われし街道」と一致しているという。そして、その街道には、古くから『彼方の者』が往来すると記されていた。


市民の悪夢と謎の囁き

福岡市の住民の間で、同じ悪夢を見たという証言が相次いでいる。
「海の底から、巨大な影がこちらを見ている」
「無数の触手が街を這い回る」
「耳元でささやかれるのは、聞いたことのない言語」

医師によると、これらの症状は集団心理によるものだとされるが、街全体に広がる不安の正体を解明できた者はいない。


歪む影と異形のシンポジウム

福岡市内で「2025年問題」を考えるシンポジウムが開催された。
「労働環境の改善について話し合う場のはずだったが、参加者たちは妙な違和感を覚えた」と、あるジャーナリストは語る。
「壇上にいた登壇者の影が、人間のものではなかったのです。通常の影とは異なり、くねくねと揺れ、まるで別の意思を持つように動いていた。気づいた人々は、そっと会場を後にしていました」

また、シンポジウムが開催されたビルの地下からは、異常な低周波音が観測された。この音は、人間には通常聞こえないはずの周波数帯に位置し、それを聴いた人々の中には「異形の夢」を見た者もいたという。


狂気の広告と響く呪文

この日、市内の天神地区のデジタル広告看板が、一斉に異常な映像を流し始めた。そこには、人間ではない何かの姿が映し出され、画面が揺らめき、断続的に「IA! IA! CTHULHU FHTAGN!」という不可解な文字列が表示された。

目撃者の一人は「見た瞬間、頭の中がねじれるような感覚があった」と証言している。ネット上では、「古きものの目覚め」「福岡が選ばれた街」というワードがトレンド入りし、混乱が広がった。


博多湾の影と人の目を持つ魚

福岡タワーの展望台から、異常な光景が目撃された。海上に、巨大な影が現れ、それがゆっくりと岸へ向かっていたという。

また、博多湾の水質に異常が発生し、突然、数百匹の魚が浮かび上がった。その魚の目は、通常の魚とは異なり、人間のような形をしていたという。


消える街路灯と歪む時空

福岡市の一部の街路灯が突如消失した。単なる停電ではなく、「物理的に消えていた」のだ。

同時に、市内の一部エリアで「時間のずれ」が報告された。スマートフォンの時計が狂い、一時的に1977年の新聞記事がオンラインニュースに表示されるなど、現実の法則が乱れたような現象が相次いだ。

そして、夜の博多の空に、不気味な渦が現れた。緑色に輝く光が、まるで何かを呼び寄せるかのように回転し、市民の間には恐怖と混乱が広がっている。

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