東京新邪 2025年04月05日【混沌と花の開花:東京で“異常な桜前線”】

東京

※注釈※
この記事は、クトゥルフ神話の世界観に基づいた完全な創作フィクションです。
現実の出来事や人物とは一切関係ありません。

混沌と花の開花:東京で“異常な桜前線”

2025年3月29日、気象庁は東京での桜(ソメイヨシノ)の開花を発表した。例年より遅い開花とされるこの出来事だが、異常な点はそれだけではなかった。
開花と同時に、都内各所において「開花音」とも呼ばれる低周波の鳴動が観測され、井の頭公園付近では住民から「地面の下で何かがうごめいているような振動を感じた」との証言が相次いだ。

この現象にいち早く反応したのは、国内外のオカルティストたちだった。英インスマス大学のクトゥルフ神話学部教授ハーバート・ウェスト氏は、「この種の振動は、旧支配者たちが眠りから目覚める際に生じる“儀式的呼吸”と一致する」と警告を発した。


■ 春の嵐:風と共に訪れた「名状しがたきもの」

3月29日午前中、関東一帯を襲った暴風雨は、各地で停電・交通麻痺を引き起こしたが、注目すべきはその風に含まれていた成分だった。東京大学異界環境研究室が回収した空気サンプルの分析によると、通常の気象では存在しえない「非ユークリッド粒子」が含まれていたという。

「風の中から『語りかける声』が聞こえた」という体験談も報告されている。声の内容は「イア! イア! シュブ=ニグラス!」といった古代アカロニア語に類似した音声であり、録音された音を再生した複数の研究者が精神錯乱に陥っている。

警視庁はこれを“集団ヒステリー”と片付けたが、国際クトゥルフ対応機構(IACO)は都内に緊急レベル4の観測官を派遣、地下水脈の調査を進めている。


■ 黄砂と共に漂う「眠れる者の夢」

3月30日、東京都練馬区では気温が25度に達し、今年初の“夏日”が記録された。だがこの異常な熱の正体は、単なる天候変動ではない可能性がある。同日、黄砂とともに観測された微細粒子の中に「夢境胞子(ドリーム・スポーラ)」と呼ばれる未知の菌類が混入していたことが報告された。

この胞子を吸引したとみられる複数の市民が、同様の夢を見たと訴えている。それは以下のような内容だ:

  • 巨大な水没都市
  • 星々が狂った軌道で旋回する天空
  • 無数の触手が伸びる緑色の空間
  • 「フングル・ムグル ナフル=クトゥルフ」と唱える影の群れ

この夢は、古代ルルイエに封印されたとされるクトゥルフ自身の夢と類似する点が多く、IACOはすでに練馬区を“感染指定エリア”に指定。ドリーム・サニタイズ(夢浄化)作業が進められている。


■ 満開の桜:人類への警告か祝福か

4月4日、東京の桜は満開となった。しかし、花びらには微細な黒点が付着しており、顕微鏡で拡大すると、それが古代文字である“エルダー・グリフ”で構成されていることが判明した。これらの文字列は、一定の順番で並べると一つの詠唱文を形成する:

「門は開かれ、空は叫び、地は裂ける。星が正しき位に至る時、彼は目覚める」

この“詠唱花弁”を触れた者の一部には、短時間で記憶の混乱、言語変調、視界に異次元的幾何学模様の出現などの症状が見られた。中でも上野公園では、夜間に桜の木々の間から“人ではない影”が出現したとされ、監視カメラには多脚の黒い輪郭が記録されたが、再生した映像は視聴後に破損し、関係者3名が入院した。


■ 花見という名の「儀式」

例年通り、多くの花見客が集まった上野公園。しかし今年は、異常なまでに「黙って見つめる者たち」が多く見られた。彼らは何も食べず、何も語らず、ただ空に向かって盃を掲げていたという。ある目撃者は語る:

「あれは人間じゃなかった。目が……目が、空の奥と繋がっていた」

一部の考察では、これらの「沈黙する花見客」は、“古きもの”への供物者ではないかとされており、その存在は現在も調査中である。

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